ふるさと納税で損をしないためにも、控除の限度額を確認しておくことが大切です。
しかし、控除の限度額の確認方法がわからないと疑問を感じている方も少なくないでしょう。
そこでこの記事では、ふるさと納税の限度額を確認する方法を詳しく解説します。
ふるさと納税の限度額を超えるとどうなるのか、超えた場合の対処法なども合わせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
ふるさと納税の限度額の確認方法
ふるさと納税の限度額を確認する方法には2種類があります。
- 課税所得を調べる
- 住民税決定通知書で確認する
それぞれの確認方法を詳しく説明していきます。
課税所得を調べる
会社勤めをしている方は、毎年年末に「給与所得の源泉徴収票」が配布されます。
源泉徴収票には「給与所得控除後の金額」が記載されています。
まずは、「給与所得控除後の金額」を確かめて、そこから「所得控除の合計額」を引くと課税所得が算出できます。
スマートフォンや電卓があればすぐにできるので、計算が苦手な方でも課税所得を算出しやすいでしょう。
また、課税所得と年収は別物なので間違えないように注意が必要です。
年収とは1年間の総支給額のことで、給与や賞与など全ての金額が含まれています。
一方で課税所得は、所得控除や配偶者控除、基礎控除などが引かれたものです。
ふるさと納税の限度額を確認する際は、「年収」ではなく「課税所得」が必要になるので注意してください。
住民税決定通知書で確認する
住民税決定通知書では、ふるさと納税の控除上限額を超えていないかどうかを確認できます。
住民税決定通知書とは、住民税や所得、所得控除などの金額が記載されている書類のことです。
通知書には県民税+市民税の合計額が記載されています。
住民税の合計額がふるさと納税の寄付金額+ 2000円と一致していれば、控除上限額を超えていないことになります。
もし住民税よりもふるさと納税の寄付金額+ 2000円の合計額が上回っていれば、限度額を超えていることになるので注意が必要です。
ただし、住民税決定通知書はふるさと納税を行った翌年の6月に届きます。
それまでは限度額の確認ができないため、すぐに知りたい方は源泉徴収票を利用した確認方法がおすすめです。
ふるさと納税の限度額を超えるとどうなるのか
ふるさと納税の限度額を超えると、「負担が増えてしまうのではないか」、「逆に損をしてしまうのではないか」と不安を感じている方も少なくないでしょう。
ここからは、ふるさと納税の限度額を超えるとどうなるのかについて説明していきます。
限度額を超えるとふるさと納税の特例範囲内となる
ふるさと納税をする際に設定された寄付の上限額を超えた場合、超過した金額に関しては還付や控除の対象とならないため、自己負担額が増加します。
たとえば、上限が5万円の方が6万円のふるさと納税を行った場合、超過した1万円(自己負担金2,000円を含む)は自己負担となってしまいます。
ふるさと納税は自分が納税したい自治体に寄付をすることで、2,000円の自己負担金を超えた寄付金額から所得税の還付と住民税の控除を受ける制度です。
ただし、控除には限度額が存在し、限度額を超えた分の還付や控除は適用されない仕組みとなっているため注意が必要です。
限度額を超えた分は寄付金控除が受けられる
ふるさと納税の限度額を超えた場合でも、寄附金控除が適用されるため、全額を自己負担する必要はありません。
例えば、上限が5万円の方が6万円のふるさと納税を行った場合、超過分の1万円よりも少ない金額が自己負担となります。
ただし控除を受けるためには、ワンストップ特例制度を利用するか、確定申告を行う必要があるので、申請手続きを忘れずに行いましょう。
ワンストップ特例制度とは、確定申告を行わなくてもふるさと納税の控除を受けられる制度のことです。
給与所得者で確定申告が不要であり、寄付先が5つ以下の場合に利用できます。
たとえば、年収が2,000万円以下の方や副収入が20万円以下の方などが対象になります。
ワンストップ特例制度は、寄付先の自治体に申請書を提出するだけで手続きができるため、面倒な手間はかかりません。
ふるさと納税の限度額を超えてしまった場合の対策は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ふるさと納税の限度額を確認できる計算式
ふるさと納税の限度額は自分で計算して算出することも可能です。
ふるさと納税の限度額の計算方法 個人住民税所得割額×20%÷(90%−所得税率×1.021)+2,000円 |
計算する際は「年収」が必要なので、源泉徴収票などで正確な年収を確認しておきましょう。
個人事業主の場合は、利益や収入などを全て合算した金額が「年収」となります。
限度額シミュレーションを利用すると便利
限度額は自分で計算して算出できますが、より簡単な方法があります。
ふるさと納税サイトなどの、簡単に控除限度額が分かるシュミレーターを利用する方法です。
課税所得を算出しなくても、年収と家族構成を入れるだけで控除額が自動的に計算されるので、計算が苦手な方にもおすすめです。
しかし、シミュレーションで出た金額はおおよそのものになるので、1つの目安としておきましょう。
また、個人事業主の方の場合は、こちらの記事で限度額を把握する方法を紹介しています。
ふるさと納税の限度額を計算する際のポイント
ふるさと納税の限度額を計算する際には、注意したいポイントがあります。
- 計算に使う年収の中にボーナスは含まれるが交通費は含まれない
- 寄付する年の年収で計算する
それぞれのポイントを以下で詳しく解説していきます。
計算に使う年収の中にボーナスは含まれるが交通費は含まれない
ふるさと納税の上限額を調べるためには、年収が必要です。
年収は一年に支払われる総支給額のことで、給与だけではなくボーナスや時間外手当などが含まれています。
ここで注意してほしいのが、「交通費」は年収の中に含まれない点です。
交通費を含めた年収で計算すると控除額にズレが生じてしまうため、注意してください。
また、交通費以外にも出産祝いや傷病見舞い、出張費用なども年収には含まれません。
控除上限額を調べる前に、年収に含まれる費用と含まれない費用を確認しておきましょう。
寄付する年の年収で計算する
ふるさと納税の上限額を確認する際は、寄付する年の年収で計算しましょう。
例えば2023年にふるさと納税を行う場合は、2023年1月1日から12月31日の年収で計算します。
1年の年収が確定するのは、年末に出される源泉徴収票が届いてからですが、前年度の年収と大幅な変化がない場合は、前年度の源泉徴収票を参考にすると良いでしょう。
目安ではありますが、おおよその上限額を確認できます。
年収ごとの限度額の早見表
ここからは、年収別実質負担が2,000円で抑えられる限度額の目安を早見表で紹介します。
ふるさと納税を行う方本人の給与収入 | ふるさと納税を行う方の家族構成 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
独身又は共働き※1 | 夫婦※2 | 共働き+子1人(高校生※3) | 共働き+子1人(大学生※3) | 夫婦+子1人(高校生) | 共働き+子2人(大学生と高校生) | 夫婦+子2人(大学生と高校生) | |
300万円 | 28,000 | 19,000 | 19,000 | 15,000 | 11,000 | 7,000 | – |
325万円 | 31,000 | 23,000 | 23,000 | 18,000 | 14,000 | 10,000 | 3,000 |
350万円 | 34,000 | 26,000 | 26,000 | 22,000 | 18,000 | 13,000 | 5,000 |
375万円 | 38,000 | 29,000 | 29,000 | 25,000 | 21,000 | 17,000 | 8,000 |
400万円 | 42,000 | 33,000 | 33,000 | 29,000 | 25,000 | 21,000 | 12,000 |
425万円 | 45,000 | 37,000 | 37,000 | 33,000 | 29,000 | 24,000 | 16,000 |
450万円 | 52,000 | 41,000 | 41,000 | 37,000 | 33,000 | 28,000 | 20,000 |
475万円 | 56,000 | 45,000 | 45,000 | 40,000 | 36,000 | 32,000 | 24,000 |
500万円 | 61,000 | 49,000 | 49,000 | 44,000 | 40,000 | 36,000 | 28,000 |
525万円 | 65,000 | 56,000 | 56,000 | 49,000 | 44,000 | 40,000 | 31,000 |
550万円 | 69,000 | 60,000 | 60,000 | 57,000 | 48,000 | 44,000 | 35,000 |
575万円 | 73,000 | 64,000 | 64,000 | 61,000 | 56,000 | 48,000 | 39,000 |
600万円 | 77,000 | 69,000 | 69,000 | 66,000 | 60,000 | 57,000 | 43,000 |
625万円 | 81,000 | 73,000 | 73,000 | 70,000 | 64,000 | 61,000 | 48,000 |
650万円 | 97,000 | 77,000 | 77,000 | 74,000 | 68,000 | 65,000 | 53,000 |
675万円 | 102,000 | 81,000 | 81,000 | 78,000 | 73,000 | 70,000 | 62,000 |
700万円 | 108,000 | 86,000 | 86,000 | 83,000 | 78,000 | 75,000 | 66,000 |
725万円 | 113,000 | 104,000 | 104,000 | 88,000 | 82,000 | 79,000 | 71,000 |
750万円 | 118,000 | 109,000 | 109,000 | 106,000 | 87,000 | 84,000 | 76,000 |
775万円 | 124,000 | 114,000 | 114,000 | 111,000 | 105,000 | 89,000 | 80,000 |
800万円 | 129,000 | 120,000 | 120,000 | 116,000 | 110,000 | 107,000 | 85,000 |
825万円 | 135,000 | 125,000 | 125,000 | 122,000 | 116,000 | 112,000 | 90,000 |
850万円 | 140,000 | 131,000 | 131,000 | 127,000 | 121,000 | 118,000 | 108,000 |
875万円 | 146,000 | 137,000 | 136,000 | 132,000 | 126,000 | 123,000 | 114,000 |
900万円 | 152,000 | 143,000 | 141,000 | 138,000 | 132,000 | 128,000 | 119,000 |
925万円 | 159,000 | 150,000 | 148,000 | 144,000 | 138,000 | 135,000 | 125,000 |
950万円 | 166,000 | 157,000 | 154,000 | 150,000 | 144,000 | 141,000 | 131,000 |
975万円 | 173,000 | 164,000 | 160,000 | 157,000 | 151,000 | 147,000 | 138,000 |
1000万円 | 180,000 | 171,000 | 166,000 | 163,000 | 157,000 | 153,000 | 144,000 |
出典:総務省ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ」
中学生以下のお子様を持つ家庭の場合は、控除額に影響はないため、計算に反映する必要はありません。
例えば、夫婦で小学生のお子様が1人いる場合は、「夫婦」の場合と同額になります。
目安ではありますが、おおよその上限額を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
ふるさと納税の限度額を超えた場合の対処法
もしふるさと納税の限度額を超えてしまった場合は、以下の対処法で対応できます。
- 副業などで収入を増やす
- 投資の含み益を利益確定にする
ふるさと納税の限度額を超えても、年内であれば対処できます。
以下で上記の対処法を詳しく解説していくので、限度額を上げたい方は参考にしてみてください。
副業などで収入を増やす
副業などで収入を増やすことで年収が増えるため、控除の限度額を引き上げられます。
気軽にできる副業としては、在宅ワークやフリマなどが挙げられるでしょう。
近年では様々な職種の副業が募集されているので、収入を増やして上限額を上げたいと思っている方は、ネットなどで求人を探してみてください。
また、空いた時間を利用してアルバイトするのも1つの手です。
週に1回から働ける求人も多数あるため、本業に支障をきたすことなく収入を増やせるでしょう。
ただし、会社によっては副業を許可していない場合もあります。
副業を始める前に、会社が副業を許可しているかを確認しておきましょう。
投資の含み益を利益確定にする
株式やFX等の投資で含み益がある方は、利益確定を行うことでその年の収入を増額でき、控除限度額も上がります。
ただし、株式や投資信託、FX、仮想通貨などの金融商品の売買によって生じた利益は、譲渡所得や雑所得とみなされます。
利益確定を行うことで税金の対象になるので注意してください。
税金が発生しても、ふるさと納税の控除限度額を上げる方が得になる場合が多いため、適切に調整を行うことが大切です。
損をしないための正しいふるさと納税の手順
損をせずふるさと納税を行うためにも、正しい手順で行う必要があります。
- 限度額を調べる
- 限度額を超えない範囲で返礼品を選ぶ
- 12月31日までに申請を行う
- ワンストップ特例制度or確定申告で控除申請を行う
ふるさと納税をするのがはじめての方でも、スムーズに申請できるように以下で詳しく解説していきます。
1.限度額を調べる
ふるさと納税を始める前に、まずは自分の限度額を調べましょう。
控除の限度額は年収や家族構成などで計算されるため、一人一人控除の金額は異なります。
上記では計算式をご紹介しましたが、計算が苦手な方や、おおまかな金額を知りたい方は、ふるさと納税の各ポータルサイトにあるシミュレーションを利用すると良いでしょう。
簡単な質問に答えるだけで、おおまかな控除上限額がすぐにわかります。
2.限度額を超えない範囲で返礼品を選ぶ
限度額を確認したら、金額を超えない範囲で返礼品を選びましょう。
自治体によって返礼品は異なります。
自治体が誇るお肉やメーカー、季節に合わせた春の農産物、旅行やショッピングで使える優待券など、バラエティー豊かな返礼品が勢ぞろいしています。
「魅力的な返礼品がある」「応援したい自治体がある」など、納税先を決めましょう。
3. 12月31日までに申請を行う
納税先を決めたら12月31日までにふるさと納税の申請を行います。
寄付する前に、合計金額を計算して上限額よりも下回っているか確認しておきましょう。
納税すると寄付した自治体から返礼品が送られます。
また、返礼品とは別に「寄付金重量証明書」が送られてくるため、大切に保管しておきましょう。
万が一紛失した場合は再発行ができないので注意が必要です。
4.ワンストップ特例制度or確定申告で控除申請を行う
ふるさと納税を行ったら、税金の控除を受けるために申請の手続きを行いましょう。
申請手続きには「ワンストップ特例制度」もしくは「確定申告」の2種類があります。
会社勤めの方は1年間の寄付先が5つの自治体までであれば、ワンストップ特例制度を利用できます。
ワンストップ特例制度を利用する場合は、翌年の1月10日までに必要書類を寄付した自治体に提出してください。
ワンストップ特例制度で必要な書類
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必要な書類も少なく、手続きも比較的簡単なので手間や時間をかけず申請を進められるでしょう。
ただし、申請期限が過ぎてしまった場合や寄付先が6つ以上の場合は確定申告の必要があります。
確定申告は3月15日までに行う必要があり、用意すべき書類も多くあるので、事前の準備が重要です。
確定申告で必要な書類
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万が一期限内に確定申告ができなかった場合でも、5年以内であれば税務署に「還付申告」を行うことで控除が受けられるので安心してください。
まとめ
今回はふるさと納税の限度額の確認方法についてまとめました。
ふるさと納税の限度額は自分でも計算できますが、各ポータルサイトのシミュレーションを利用するとおおまかな限度額がすぐに確認できるのでおすすめです。
また、限度額を超えてふるさと納税を行ったとしても、副業で収入を増やしたり、利益確定にしたりすることで対応できます。
ふるさと納税を初めて行う方や、納税先を追加したいと考えている方は、まずは控除の限度額を確認してみてください。
確認してから申請を行うことで、限度額を超えて自己負担額が増えてしまったというミスも防げるでしょう。